寄り添うことの美しさ
静岡行きのお話。続き。
ちょっと文が長くなったので間が空きました。
主観で建築のことを呟き続けているので
読み飛ばしてくださっても構いません…(笑)


きっかけは、いつかの初台ICCでの展覧会だったかな?
それまで、藤森照信さんの建築は、特異なレアケースであって、
いまひとつ掴みどころがないものとして感じてました。
でも、ICCでの体験で、曖昧な印象が鮮烈に塗り替えられました。
屋内に再現された藤森建築の一部に、
今までにない「身体が気持ちいいと感じる建築」を体験したのです。
今回そのことを、もう一度、そして一部ではなく、まるごと体感したくて、
天竜の「秋野不矩美術館」と、掛川の「ねむの木こども美術館」のふたつを
じっくり見てきました。

写真をひとつ。ねむの木こども美術館の玄関です。

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ねむの木学園は有名な学校ですよね。
その山奥の学校から、さらに少し山へ入ったところに、
まるで童話に出てくるような不思議な美術館がありました。
竣工してさほど経ってない建物ですが、山の木々に囲まれて、
やがて埋もれて融けていくように朽ちていく姿が
容易に想像できるような、そんな趣きのある建物です。

良く考えたら、きっとこの「想像できる」というのが、
自分が「良い」と感じる大きな気持ちの柱に
なってるのかもしれません。こんな不透明な時代に、
その土地の未来が分かることへの安心感でしょうか。
いつもは、そうした感想を現代建築に抱くことは
ほとんどないのですが(たいてい「誰が片付けるの?」感想が多いかも)、
「この建物は、ここにあっていいんだ」という、
訪問者にポジティブな肯定を抱かせるような、そんな安心感がありました。
新しくできたものが、風景や地域に寄り添おうとする
明確な意志を持つことが嬉しいと思うのかもしれません。
都市郊外の里山に溶け込む魅力ある開発を考えたときに、
こういう視点があれば嬉しい気がしました。

もうひとつ、秋野不矩美術館は、市街地にほど近い丘の上にあります。
この美術館は入口で靴を脱いで上がります。
だから裸足になって、足裏で直に建築を感じられました。
建物突き当たり、吹き抜けのある石床の展示室では、
美術の発する熱量と観覧者の興奮を、高い吹き抜けと
ひんやりとした床とで鎮静させるような造り。
船の形のような美術館へ敷かれた遠回りのアプローチは、
建物をいろんな角度から、それこそ時代視点を変えて眺めるための仕掛けでしょうか。
アプローチ沿いに続く電柱は、現代日本であることを
忘れさせるような木の電柱でした。

どちらの建築ともに、建具や蝶番や金具、ドアノブひとつの処理をとっても、
きちんと破綻なく馴染むように目配りされています。
プラスチックやアルミなどの「軽く見える素材」は、
視界に入るところにほとんど使われていません。
身体の触れる部分は、できるだけ鋳鉄、波ガラス、漆喰、あるいは土、
木、草、石、という素材です。
それが、どれだけ清々しくて落ち着けるものだったか、
言葉にするのは難しいのですが…。

建物自体は、ゲームや物語のそれのような、
無国籍ともいえるファンタジー的な偉容に見えます。
ただそうした、地域・時間を越えた混ぜこぜの建築様式が、
気持ちいい空間に正しく昇華しているように思えてならないのは、
ひとえに、建物の構成要素や素材の選択が、
徹底しているからかもしれません。
カモフラ柄のゴアテックス素材テントのような、
最新素材でできたものが、風景を擬態して「溶け込む」のではなく、
風景と同じ構成素材を使って、「寄り添う」ように「馴染む」から
訪れる人の心にも違和感なく寄り添うのでしょう。

たとえば、ポリエステルのシャツを着ているときの、
薄皮に静電気の吸着を感じるかのような疎ましさ。
対して、くたっとした麻のものや、綿多重ガーゼの
シャツを着たときにあらわれる、皮膚との優しい境界線の感覚。
建物も含めて、自分が自然環境と一体化することが生む
五感に訴える気持ちよさ。これは「恍惚」に近い状態かもしれません。

プリミティブなものからの発想が、数値上のものはともかく、
体で感じることとして、遅れていたり劣っていたりするものではないこと。
それをあらためて体感できたふたつの建築でした。
藤森建築は触れてみたくなり、触れていたくなる建築でした。

秋野不矩美術館は、カーサブルータスの美術館特集でも一目置かれたとか。
秋野不矩の日本画も素晴らしく、おすすめの美術館です。
どうぞ一度訪ねてみては…?
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by ushio_mizta | 2008-06-22 00:32 | 日々の泡
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